「高齢社会」という言葉、今の日本を象徴するようです。人々が長寿になることは、本来は祝い喜ぶべきことです。しかし何となくマイナス・イメージが定着しています。なぜでしょうか。それに対して美容師は何をすべきでしょうか。何ができるでしょうか。山野学苑はみなさんに呼びかけます。
高齢社会の現状
最初に高齢社会の現状と何が問題なのかを正確に理解しましょう。2014年9月の統計では、日本人の平均寿命は、女性86.6歳、男性80.2歳。そして100歳以上の高齢者は58,820人です。統計をとりはじめた1963年は153人だったとのことですから、52年間で何と384倍にもなりました。
2015年度の国家予算は96兆円、そのうち社会保障関係は31.5兆円と3分の1。このうち年金が11兆円で、医療費は9兆円、介護費は2兆円となっています。そして社会保障費は今後、毎年1兆円以上も増えると予測されています。
社会保障費が国家予算の中で大きな位置を占め、それが増え続けるということが、高齢化がマイナス・イメージとなる原因の一端なのですが、よく見ると医療・介護経費は年金とほぼ同額です。年金は日々の生活の費用ですから、決してマイナス要素ばかりではありません。
80%の高齢者は元気です
高齢者というと病気がちとか寝たきりのイメージで語られることが多いのですが、実は高齢者の80%は自立して社会貢献ができる身体と能力を持っているのです。介護は不要なのです。
一方、高齢者は約1,000兆円の金融資産を持っているという統計があります(2013.9週刊ダイヤモンド)。約1,000兆円とされている政府(国)の債務残高とほぼ一致しています。残念ながら高齢者をはじめ多くの国民は政府の社会保障政策を信頼していませんから、自分の老後を守るために、好きなこと、やりたいことも我慢して、金融資産を手放す気持ちになれないのが現実なのです。
美容は生きる活力の「源(みなもと)」
現在活躍されている美容師のみなさん、そして子育てなどでリタイアしている美容師OGのみなさん。みなさんは、美容師という仕事は人々の心身を癒してあげることができる素晴らしい職業であることをご存じだと思います。私は男ですが、母親の山野愛子の人生を見ていて、美容師という職業の素晴らしさをよく知っています。
私は、美容が持つ素晴らしい意義を、高齢者の福祉向上のために生かすことができないかと考えました。そして「美容福祉」という理論を提唱して、山野学苑で美容福祉に関するさまざまな研究・教育・実践を積み重ねてきた結果、美容界と福祉に携わる方々から注目されるようになっています。
「ジェロントロジー+美容福祉」を
高齢社会が進むということは、政治・経済・文化・教育などさまざまな分野に大きな問題をもたらしてきます。美容師もまた、そうした問題に無関心ではいられなくなってきています。美容師が高齢社会の福祉向上に貢献するためには、もっとレベルアップすることが不可欠です。
そう考えた私は、5年前から、アメリカの南カリフォルニア大学(USC)と提携して、ジェロントロジー教育の日本でのシステム化を実現させました。
ジェロントロジーは、高齢者の医療・心理・教育・介護などの諸問題について学際的・総合的に分析・研究し、あるべき姿を提起しています。
美容師と美容師OGのみなさん、いつでも、どこでも、何度でも学ぶことができる「スカイ・キャンパス」システムで、ぜひジェロントロジーを学んでください。
ジェロントロジーを学び、「美容福祉」理論に基づき、すでに多くの実績を上げている美容福祉技術講習、訪問理美容のための登録美容師制度などにご注目ください。
きっと美容師の仕事の素晴らしさを再確認することができると思います。