登録理美容師

美容福祉を経営に取り込むポイント
美容室トゥルベール 夏目 久枝(なつめ・ひさえ)

美容室トゥルベール 夏目 久枝(なつめ・ひさえ)
NPO全国介護理美容福祉協会登録美容師


はじめに
私は、愛知県蒲郡市で、美容室を初めて28年、訪問美容を初めて16年になります。訪問美容を始めたきっかけは、実家にいる私の祖父が、自宅で寝たきりになり、デイサービスを週2~3日利用していまして、ある日「デイサービスに行くから、カットに来てほしい」と言われたのがきっかけでした。今は、施設8件、在宅20件程伺わせていただいております。
それほどたいした経験があるわけではないのですが、私なりに試行錯誤して続けてきました訪問美容についてご報告をさせていただきます。
訪問美容もいろいろな方法がありますので、今から訪問美容をされる方には、あくまでも「こんな方法もあるんだ……」と参考にしていただけましたら幸いです。

私の訪問美容に対する姿勢

1. 施設への参入の仕方
*まず、電話でアポを取ります。
*名刺・料金表・他の施設の表を用意します。

E A G C
B H
A A C G
F B D H
E C A
B
C A
D B

上記の様な表を作り、新しい施設に持って行きます。参入させてもらえそうな時はこれを見せて他の施設が月2~4回利用してもらっていることをアピールして回数を入れてもらいます。NPO全国介護理美容福祉協会に所属しているので、そこを強調しても良いと思います。そうすることによって、美容に詳しくない方でも山野愛子先生を知らない方はいないと思うので、信用性があると同時に、皆さんも責任感が持てると思います。
毎年、年末には、来年の一年間の予定表のカレンダーを作成して各施設に届けています。そうする事で、施設側も予定がたてやすいと思います。

<補足>
サロンのお客様から新しい施設が出来るという情報を聞き出してからアポを取るようにしたり、また逆に施設の情報をお客さんに提供してあげる事で、お客様も施設選びの参考になります。

2. 在宅へのアピールの仕方
まずは、社会福祉協議会への挨拶と介護支援事業所への挨拶など、施設・デイサービスに入れなくても挨拶しておくことです。そうするとケアマネージャーやヘルパーさん達が利用者さんから、「髪の毛切りたいのだけど」と言われた時思い出してもらえるので、そちらからの依頼が結構多いのです。後は、美容室のお客様に在宅に行った時の話をして「寝たきりのお年寄は、おしゃれだよ」と、訪問美容を行っている事をアピールします。
そうすると、お客様も知り合いの方から「家のおばあちゃんが寝たきりになって、カットしたいのだけど、どうしましょう?」と相談されても、「私の行っている美容室なら、お家に来てくれるよ」と話してもらえます。

3. 施設スタッフ・ヘルパーさんとの連携による利用者様の身守りについて
【施設】
カットされる方の名前を毎回書き出しておいてもらいます。たまに予約の入っていない方が来てしまう事があるので、来た方にお名前を聞いて名簿にあるかを確認してから、カットに入ります。カットの長さも本人に確認して良いものか、スタッフに聞いて入ります。だいたい1人、10分前後でカットしていきますので、1時間~2時間で終わる予定で行っています。
サロンにカットにみえる方でも、本人に確認して良い方と、御家族かヘルパーさんに確認する方とがいると思います。

【在宅】
そのお宅に合った場所を考え、玄関だったり、廊下だったりですが、カバンは、出来るだけ、部屋の外に置いて、必要な道具、ハサミ・トリマー・クロスなど持って部屋の中に入ります。どうして部屋の中までカバンを持って行かないかというと、利用者が、認知症だったりすると、部屋の物をカバンに入れて持って行かれたと思われるので、私は、これしか持っていない事を見せてれば、疑われる事もないと思います。
和室の時もありますが、在宅はクロスの上にアイデア商品で買ってきたUFOクロスをつけて、下に落とさないようにカットをして、終わったらそのままゴミ袋に入れて、カットクロスも下から、たぐり上げてゴミ袋に入れて、持ちかえります。
首に巻くタオルは、布を使わず、ペーパータオルを使っています。

4. 利用者の身体状態に合わせた商品の選択方法について
サロンのお客様も訪問美容の利用者様も同じですが、最近は肌の弱い方が増えているので、毛染め・パーマ液の選び方も注意が必要です。塗布の仕方や、今は薬液の刺激をやわらげるさまざまな付属の物も出ているので、その方の身体の状態を考えて自分なりに選んで施術させていただいています。
15年前、サロンのお客様が、ヘアカラーの放置時間に意識を失い泡をふいてしまいました。救急車を呼んだのですが、アナフィラキシーショックでした。薬品によるアレルギー症状のひとつで、急激な血圧の低下により意識を失なわれてしまいました。これはとても危険な状態です。ただ寝ていると思って声をかけないのではなく、まめに声をかけて起こす事の重要さを実感しました。

5. 安心・安全性を保持するための消毒の方法&感染症予防対策について(技術者の身の守り方)
タオルはペーパータオルを使用します。ペーパータオルは、毎回洗濯してアイロンをかける事で、熱消毒になります。もう10年以上使っていますが、破れず使えています。他の道具に関しては、ハサミは、コットンに消毒液を染み込ませた物を持参して拭き、後のブラシ・トリマーなどは、赤外線消毒機に入れます。
感染症と一言で言っても、風邪からインフルエンザ・エイズなどさまざまですが、まず事前に施設スタッフと相談して、感染の疑いのある方は最後にしてもらい、クロスの上に使い捨てクロスをかけ、終わったら捨てるようにしてます。
技術者もマスクはもちろん、感染者のカットに入った時には、何処にも寄らず帰ったらすぐ着替えます。その後は手洗いとうがいです。

訪問美容を始めて気が付いた事

私は、訪問美容を始めて、認知症ヘルパーの講習を受け、この15年で約1000人以上のお年寄りと接して来ました。実践を通じて最近すごく感じる事は、「訪問で気をつける事は、美容室でも同じ事が言える」という事です。
たとえば、足元が見にくいので、カットが終わったらお客様を誘導する前に、カットした毛を掃いて足元が滑らないようにするとか、パーマ・カラーの放置時間は、出来るだけお声かけをしてあげて、地肌がしみないか聞いてあげたり、また、待ち時間にサロンでは、お茶とお菓子を出しているのですが、糖尿病などがないかを聞いて、もしある方にはお茶だけにしておくなどです。訪問美容でお年よりに接してなければ気がつかなかった事です。
逆に在宅に行くと、お茶とお菓子を出して頂く事もあるのですが、私は、お茶だけ頂いてお菓子はその場所では食べません。以前出されたお饅頭が腐っていた事がありました。ご家族の方は親切で、出してくれるので、その日以降は、「家の子供が、このお菓子好きなので、もらっていくね」と言って、持って帰って来て、大丈夫だったら、頂きます。
後は、お金の頂き方です。美容室に来る方でもマダラ呆けの方などは、その値段はどのお札を出したら良いのか分からない事もあるのですが、認知症ヘルパー講習を受講しましたので、お手伝いしてあげる事も出来るようになりましたし、在宅で、片麻痺の方などは、お釣りを渡す時にお札をしまうまで、小銭を渡すのを待つ事でご自分で、お金をしまう事が出来ます。このような、経験も皆さんは、感じていると思います。
また、最近では、特に私の美容室が、訪問美容をやっているからという事を調べたり人から聞いて、認知症の方や車いすの方が、美容室へ、来て頂けるようになってきたのが私としては、すごくうれしい傾向です。
愛知では、福祉美容師同士の連携を通じ定期的に情報交換をしております。
秋にNPO高山の研修会を企画したのが始まりで、その時出来た輪から、秋とは違う春を見たく、再度有志の会でサークル活動としてテーマを決めての第2回高山企画の勉強会をしました。
更に、今年の5月に蒲郡で勉強会を開きまして、今回12名の参加でしたが、皆さんの持ち込み企画で、個々の紹介したい事をそれぞれ発表しあいました。
各福祉美容師が、それぞれの地域やサロン・施設に合った、また自分の得意分野での活動や施術、使用薬剤や便利グッズ等々の発表をしました。それぞれが良いモノを持っていて、サロンでも訪問でも使える内容でしたので、大変参考になったと思います。普段聞けない事や現在の悩み事等もディスカッション出来たり、絞染体験や食事を共にしたりと有意義な時間でした。そこには、一泊という宿泊を付けた事も大きな利点だという事が、毎回参加された先生方の感想でもあります。
愛知県の美容組合の現状として、福祉の講習を企画したい各支部に、勉強したい美容師様の意向が強くみえ、各支部による講習会の場に立つようにもなりました。
江南支部や一宮支部において、「認知症・障がいをお持ちの方へのサロンでのヒアリハット(リスクマネージメント)」について、経験と知識からの講座と質疑応答を含むディスカッションといった形での講習会です。
サロンでも確実に高齢化・障がい・認知症問題は直面してきている大きな問題点だという事も感じました。
施設では、利用者様、ご家族、施設スタッフのみなさま、在宅では、利用者様、ご家族、ケアー関係者様、と信頼ベースの上での福祉活動を心がけていくべきだと思います。
福祉美容師として、地域の美容師や、美容組合等の機関、各地の福祉美容師との情報交換が出来る連携の輪が、今後の福祉美容を高めると共に、個人では「福祉美容を経営に取り込む」ポイントになり得ると思います。

参加者名簿

北海道 山下秀治
岩手県 鵜浦智美、佐野輪二、多田ゆみ子
宮城県 庄子泉、八鍬茂子
栃木県 矢部小百合、川津孝代
茨城県 古山佳美、羽田芳枝
神奈川県 渡邊富士子、柿崎純子、佐川千明
埼玉県 齋藤さとみ、杉浦夏子、佐々木由美子、桜木三智子、石川恵美、坂口千恵、坂口涼、工藤礼子
千葉県 大平千代子、吉田理美、菊池百代、久保山一美
東京都 大内とし江、跡部美代子、倉片俊子、引田雄一郎、小池由美子、山下師賀子、池浦斗糸子、藤田智子、中村美恵子、神山明子、佐野美恵子、七井勝彦、丸田ゆり、茂木明子、宮寺那奈、谷津田美和子、奥津紀美子、河口美香、小林進之介、杉本剛英、奈良基子、伊藤徳子、児島祐子、本間和子
静岡県 渡辺しのぶ、菊池よしえ
長野県 遠山光子
愛知県 西尾栄次、山下玲子、夏目久枝
事務局 北村秀敏(事務局長)、荻野道人(同次長)、村木代志美(事務局)、奥山一成(理事)
静岡県の地域活性化イベント 一宮市で美容福祉技術講習

美容福祉実践レポート

静岡県の地域活性化イベントに参加
2015年9月12日、静岡県小山町が推進する地方創生先行型事業としてのイベント「健康づくり大学」(福祉理美容による地域活性化事業)に山野学苑学生30人、教職員8人、計38人が参加した。
学生と教職員は、メイク、ネイル、ハンドマッサージ、エアブラシを利用した美容施術のボランティア活動を行った。会場の小山町「道の駅すばしり」には観光途中に立ち寄った人などが訪れ、ハンドマッサージでは「気持ちいい」の声が聞こえ、エアブラシでは腕にチョウやバラが付けられ大変、好評だった。

一宮市で美容福祉技術講習を開催
2015年9月14日、15日の2日間にわたり、愛知県一宮市で山野学苑公開講座美容福祉技術講習を開催した。地方での開催は、長野県、北海道、福島県、静岡県、につづき5回目で、会場となった美容室エポック(登録美容師 山下玲子さん経営)には一宮市で活躍する理美容師を中心に12人の受講生が参加した。遠路、岡山県からの参加者を含め、参加者は美容福祉の必要性を体験された方々で熱心に受講される姿が印象的であった。後段の2日間は10月19日、20日に開催を予定している。

理美容福祉の必需品
  • すいコ〜ム
  • ハッピーシャンプー