登録理美容師

がんサバイバー(患者)への美容福祉の取組みと
マーケティングについて
医療用帽子・簡単着脱式髪付き帽子
「ウィッシングキャップ」 考案者の視点から
伊佐 美佐(いさ・みさ)ISAMISAデザインスタジオ代表

伊佐 美佐(いさ・みさ)
ISAMISAデザインスタジオ代表

がん治療による「脱毛」と「外見ケア」の重要性


今や2人に1人が、がんになるという時代、抗がん剤治療を行う患者数も増加しています。
抗がん剤治療の副作用はさまざまな変化をもたらしますが、なかでも脱毛による外見の変化は精神的なダメージも大きく、特に女性にとっては非常に辛いことです。
乳癌や子宮がんなどの20代~40代の患者も増えており、一番の悩みは「髪の毛が抜けること」といっても過言ではありません。 また、医療技術の進歩により、通院治療をしながら社会生活を続けるのが普通になってきました。 そんな中で、がん治療中のQOL(生活の質)の向上に「外見ケア」「美容ケア」はとても重要になってきています。


「脱毛」ってどんな風になるの?

私は41歳の時に「がん」になり、抗がん剤治療を受け、ほとんどの髪を失いました。
私も含め患者さんの多くは、抗がん剤治療をするにあたって、医師から「脱毛する」と説明は受けますが、詳しいことが分からないままウィッグや帽子を探すというのが現状です。
いざ自分が脱毛するとなれば、「いつから?」「どんなふうに?」「どのくらい?」「最終的にはどうなるの?」「脱毛すると頭皮は?」「シャンプーはどうしたらいいの?」「治療が終わったら、また髪は生えてくるの?」など疑問が次々に湧いてきます。
しかし具体的な情報が少なく、自分の外見がどんなふうになるのか、イメージできず戸惑っている間に治療がどんどん進んで、外見の変化に驚きと落胆を隠せない患者さんが多いのではないでしょうか。

抗がん剤治療」と「脱毛」 私の場合

<クリックで拡大表示>

「抗がん剤治療」と「脱毛」 私の場合・・・

そこで、抗がん剤治療による脱毛の経過を、イラストや写真をまじえながら具体的にお話させていただきます。個人的な体験ではありますが、一例として参考にしていただければ幸いです。
抗がん剤治療には、さまざまな期間や方法がありますが、3週間を1クールとして第1週目の内の1日に抗がん剤を投与し、後の2週間は自宅で過ごすというサイクルで、4クールとか8クールなど行われることが多いようです。(私の場合1クールの内容は、第1週目は入院し毎日続けて3剤の抗がん剤を投与し、後の2週間は週1回1剤を通院にて投与しながら自宅で過ごすという治療でした。)
抗がん剤治療の期間やサイクルは個人個人違います。毎週1回抗がん剤投与という場合もあります。
どのようなサイクルで治療しているのかは、あまり抵抗なく話せる患者さんが多いように思います。美容室にいらしたら、患者さんとの会話の取掛りとして伺ってみるのも有効ではないでしょうか。
副作用なども治療サイクルに大変影響するので、治療について話を伺っておくとコミュニケーションに役立ちますし、ケアのスケジュールも組み立てやすいと思います。

いつから?
脱毛は、抗がん剤を投与して通常2週間目くらいから、私の場合は10日目くらいから突然始まりました。

どんなふうに?
何の前兆もなく痛みもないので、すぐには気付かないほど。肩に落ちている大量の抜け毛を見つけ何度も払っていた時やっと脱毛が始まったと気付いたくらいです。その後、左写真のように手で触ると、指の間に束になってゴッソリ抜けてきました。

どのくらい?
手で触ると際限なく抜け、すぐにスーパーのビニール袋いっぱいに。その夜お風呂でシャンプーしたら一日で50%くらいに。

最終的にどうなるの?
抗がん剤投与を重ねるごとに脱毛は進みますが、生えぎわの髪は抜けずに最後まで残りました。帽子から生えぎわの髪を出してなんとか外見を保つ感じ。しかし、治療終了までには生えぎわも抜け、ほとんど髪がない状態に。最終的には、まつ毛や眉毛も抜けてしまいました。

脱毛すると頭皮は?
抗がん剤の影響で、肌が敏感になり肌トラブルや色素沈着に悩まされる方も多いです。敏感肌になり、シャンプー剤等でかぶれるなど思わぬトラブルに注意が必要です。

治療終了後、髪は生えてくるの?
8か月~1年ほどでショートスタイルに。髪質が変わってクセ毛になり、肩くらいまで伸びると毛先がカールして巻き込んでしまい、まっすぐ伸びず困りました。落ち着くまでに2~3年かかりました。

がん患者の「脱毛」に対する悩み

がん患者の「脱毛」に対する悩み

脱毛が始まると、誰に見られているわけでもないのに人の視線が気になってしまう。ウィッグをずっとかぶっていると汗や頭痛に悩まされて辛い、かといって帽子だけだと生えぎわが気になる、というのは患者共通の悩みです。

脱毛した私 5つの困った!
1. 髪がないから汗が顔に流れ落ちて困った!
2. 手がしびれて細かい作業ができず困った!
3. 抗がん剤治療で肌が敏感になり、帽子の縫い目で頭皮がかぶれて困った!
4. 髪がないので帽子がズレて困った!
5. 蒸れる! とにかく蒸れて困った!

医療用帽子・髪付き帽子「ウィッシングキャップ」

<クリックで拡大表示>

そして生まれたのが、医療用帽子・髪付き帽子「ウィッシングキャップ」

自らの脱毛体験をもとに、1枚かぶるだけでOKの「取り外しできる髪付き帽子」を考案。
治療中でも、普通に帽子をかぶっているように見えます。帽子のデザインも豊富でとても自然です。

単なる帽子でもウィッグでもない「ウィッシングキャップ」独自の工夫がこれ!(特許4548648号)
・帽子はすべて肌を守る安心二重構造!
・吸汗&速乾素材「フィールドセンサー」を内側に用いることで肌はいつもサラサラ!
・スナップで留めるだけなので着脱が簡単!
・赤ちゃんの肌着のように縫い代が肌面に触れない縫製なのでデリケートなお肌に安心&やさしい!
・サイズ調節機能付きなのでズレない・脱げない・回らない!
・帽子内側にクールパッドをワンタッチで装着!貼るだけでヒ~ンやり涼しい!が長時間持続。

「これからの美容福祉に向けて、がんサバイバーの視点から

・脱毛したら、今までの美容室を訪れる気になれなくなってしまった。
・外見ケア(ウィッグや医療用帽子など)に詳しい美容室があれば利用したい…のに、どこにあるか分からなくて困っている。
・美容室に行っても、他のお客さんがいるところで脱毛した姿を見られるのは恥ずかしい。人目を気にしなくてすみ、安心できる個室や環境の整った美容室があれば利用したい。
・治療終了後、髪質や体質が変化して敏感肌になりヘアカラーやパーマは肌トラブルが心配。

など、がんサバイバーには、治療中から治療後に至ってもさまざまな悩みや要望が生じてきます。その際にがん患者が、安心して美容福祉師の方に外見のケアを依頼する事ができれば、こんなに心強く有り難いことはありません。
また、治療中からお世話になっていれば、治療後に自毛が回復してからのさまざまな症状が現れた時にも、引き続き信頼して美容福祉師の方にお願いすることができます。
「外見ケア」や「美容ケア」への取り組みは、がん患者の治療に対する前向きな気持ちを支援することに大きく貢献すると思います。その意味でも、私達がんサバイバーとしては「美容福祉」への期待は大きいのです。「美容福祉」という概念が当たり前になり、誰もが享受できる日が来ることを願ってやみません。私もがんサバイバーの一人として、美容福祉師の方々にいろいろ教えていただきながら、多角的にがん患者を支援できるようなネットワーク作りに取り組んでいきたいと考えています。

理美容福祉の必需品
  • すいコ〜ム
  • ハッピーシャンプー