遠山 光子(とおやま・みつこ)
登録美容師
はじめに
私は長野県松本市で登録美容師として活動して2年目になります。松本市は、日本一標高が高い24万人都市で、日本一標高が高い空港があり、日本一紫外線が強いとされています。
また長野県下で最大の面積を誇り、歴史、自然、温泉、グルメを堪能できる豊かなエリアです。
公開講座受講の動機
私は、もともと福祉関係に興味がありました。十数年前に長野県で福祉美容講座が開催されるのを見つけましたが、締め切りとなっていて、他の会場は県外でした。また当時は子どもが小さかったため、断念せざるを得ませんでした。
しかし何とか美容と福祉を結び付けた活動ができないかと考え、ホームヘルパー2級資格を取得して、介護の心得と技術を学びました。
その後、バリアフリーのサロンに勤務することになり、接客面で介護の勉強成果が生かされたこともありました。ある時、小児がんで子ども病院に入院してしまった小学生のお客さまに出会いました。その時、私が病院まで行って美容をしてあげることができればと、再び福祉美容への関心が高まりました。
その後、私自身が体調を崩してサロンを退職せざるを得なくなりましたが「福祉美容」というキーワードが頭から離れませんでした。そこで一昨年、福祉美容への再起をかけて、東京代々木の山野学苑公開講座を受講し、登録美容師となりました。
登録美容師としての活動
登録美容となって松本市で施設への営業を始めましたが、仲間もなくたった一人で手さぐりのスタートとなりました。しかし運よく、学生時代の先輩が老人福祉施設併設の病院に勤務していて、その病院がカットを希望している患者さんを紹介してくれました。また老人福祉施設や養護学校に出入りしていた別の友人の紹介で、2件目の訪問美容を開始することができました。
活動を通じての現状と課題
1.施設訪問について
昨年度まで松本市内から山越え、峠越えで車で1時間半の場所にある老人福祉施設併設の病院に毎月おじゃましていましたが、冬場の大雪や凍結などで道路が通行止になったり、双方の都合が合わなかったりで伺えない日が多くなり、契約を解除しました。
この経験から言えることは、登録美容師一人での活動では限界があります。チームを編成して行えば、リスクマネジメントもできるし、活動の幅が広がると考えています。
2.在宅への訪問美容について
私はホームヘルパー2級の資格があるので、社会福祉協議会の有償ホームヘルプサービスの協力会員に登録して活動することによって、地域のケアマネージャーとのパイプを作りました。これによって現在は少しずつではありますが、社協からの依頼で在宅への訪問美容を行っています。
3.障がい者とのつながり
障がいを持っている方が参加しているダンスサークル発表会のヘア担当のボランティアで様々な方とつながりが出来ました。高齢者だけでなく身体や知的障がいのある方々への美容福祉にも取り組んでいます。ダンスサークルの活動に参加している時が一番の楽しみになっています。
4.在宅訪問活動について
登録美容師として活動を始めた際、社会福祉協議会で「美容券は使えますか」と聞かれました。松本市が発行している理美容券は、組合員が組合で換金してもらう仕組みになっています。しかし私はサロン勤務をせず個人で活動していたため、理美容券を換金することができません。そこでさしさわりのない範囲で、組合加盟のサロンに勤務することにしました。
5.サロンワーク
サロン勤務の際、美容福祉技術講習で学んだ歩行補助、車いす移乗、衣服の着脱等の技術が役立っています。その結果、付添いで来店するご家族や福祉関係のスタッフの方々との信頼関係を築くことができて、お客さまに安心して来店していただけるようになりました。
今後の取り組みについて
私は「美容室=コミュニケーションサロン」であるべきだと考えます。その地域のさまざまな情報を発信して、誰もが集える場所にすることです。
現在店長として勤務しているサロンは、1階に美容室とペットサロンを併設し、2階を多目的スペースとしているユニークな構成となっています。
1階の美容室はほぼ完全予約制にして、訪問美容と両立させています。またペットも大切な家族という考え方のもとで、同伴での来店や一時預かりにも対応しています。
2階の多目的スペースは、コミュニケーションスペースとして、講習会やワークショップ等への貸し出しやイベントに利用していただいています。
さらに、地域の方々に対して、新たに以下のような活動を検討しています。
1.アロマ療法による予防介護教室
2.セルフケア、化粧など、コスメ療法による予防介護教室
3.ヨガ、健康体操による予防介護教室
4.ペットサロンを活用したアニマルセラピー体験
一階の美容室とペットサロン、2階のコミュニティスペースを活用して、以上のような活動を展開して、高齢者、障がいのある方、児童、幼児などすべての方々が、垣根をこえてつながることができる活動をしていきたいと考えています。
美容室をコミュニケーションサロンに
私が勤務しているサロン紹介
サロンの周囲にはたんぼが広がり、空気が澄んでいます。1階は美容室です。
ペットサロンとコミュニティスペースがあります。




