登録理美容師

「ハッピーシャンプー活用」と「要介護5の方の介護」
ヘアーレスト 西尾英次

西尾英次=ヘアーレスト(愛知県医一宮市)

みなさん、こんにちは。 私は15年くらい前から訪問理美容を行ってきましたが、内容は頼まれて月に数人という程度でした。この訪問理美容を本格的に実施するためには何か良い方法がないかと考えていた3年前、東京ビッグサイトで開催された展示会に上京した際、「すいコ~ム」に出会いました。早速、山野学苑が行っている美容福祉技術講習を受講し、以後、本格的に訪問理美容を始めたのです。 現在、私が経営する理美容室(従業員12人)の売上げの20%(月100万円)が訪問理美容となっています。

トレーニングにあたって、最初に施設で行っているシャンプーを見学させていただきました。入浴できる方は、ストレッチャー浴とか機械浴の際にシャンプーしていますが、入浴できない方はビニール製を膨らませた簡易シャンプー台かドライシャンプー等でした。その介護指導員がされているシャンプーを見ていて利用者様の扱い方などは、学ぶところがありました。
その上でハッピーシャンプーを説明し実演したところ、介護指導員も大変興味を持ち、美容と介護の仕事をリンクさせてみようということになり、介護指導員にハッピーシャンプーを使っていただくことにしました。念のため付け加えておきますが、カットやパーマと違ってシャンプーは美容師資格がなくても出来ます。そこで介護指導員に私の美容室に来ていただき、手の使い方、シャワーヘッドの使い方、洗い方など美容師のシャンプー技術の基礎を学んでいただきました。

このように美容師と介護指導員が相互にお互いの技術を学び交流する中で、介護指導員が他の介護指導員に教えていくためにも介護シャンプーのマニュアルをまとめました。同時に美容師が施設でシャンプーをする際に求められることもかなりあります。もともと美容室でのシャンプーは、頭部を洗うということに加えて、心地よさという付加価値を提供するということにあります。ですから施設でのシャンプーも利用者様に心地よさという付加価値を提供できる内容、例えばヘッドスパやアロマテラピーなども加えていく必要があります。こうした点について、地元で一緒に行動している仲間と事例を作るよう検討を続けています。その面でもマニュアルができれば、美容師が行う介護シャンプーも1ランク上げられるのではないかと思います。
理美容師と介護指導員にとってのシャンプーの課題をまとめてみます。

理美容師の介護シャンプーの課題
〔在宅〕
ベッド上
基本的には介護度が高い利用者様が対象。
ベッド上で安全に短時間に行えるシャンプーが必要。
〔施設〕
車椅子、ベッド上、椅子
基本的には施設により様々な利用者様が対象。
カット・パーマ・カラーなどの技術に伴うシャンプーが必要。
〔お店〕
車椅子、椅子
基本的には介護度が低い利用者様が対象。
理美容室で提供するクオリティの高いシャンプーが必要。
介護指導員の介護シャンプーの課題
〔在宅〕
ベッド上
基本的には入浴介助が受けられない利用者様が対象。
訪問介護の中で行われることが多く、一人でベッド上で安全に短時間に行えるシャンプーが必要。
〔施設〕
車椅子、ベッド上、椅子
基本的には施設により様々な利用者様が対象。
利用者様の体調などで入浴サービスが受けられないときに行われることが多く、状態に合わせたシャンプーが必要。

以上のようにどんな状態であっても、利用者様に提供できるシャンプーのマニュアル作成が必要です。

私の美容師としての経験から言えることは、お客様から「気持ちがいいわ」と言ってもらえるのはシャンプーとマッサージです。カットで気持ちよいとは余り言われません。肌と肌が触れ合うシャンプーとマッサージは美容師として最も大切にすべき仕事だと思います。ハードとしてのハッピーシャンプーがいくら良くても、ソフトつまり使う美容師の人間性と技術が未熟ではダメだと思います。

「要介護5」の方の問診票を作成してカットを行った実践例
<問診票>
〔本人情報〕 75歳、女性、要介護5。
〔コミュニケーション〕 意思の伝達=できない。話の理解=ほとんどできない。視力=物の識別はできる。聴力=大きな声は聞こえる。
〔利用者履歴〕 病歴=高血圧、66歳より3回脳梗塞発症、寝たきり。生い立ち=嫁いでから大垣在住。職業歴=専業主婦。家族=息子2人。人生観=民謡おどりなどサークル。趣味=サークル活動。
〔ご家族の要望〕 利用者に対する接し方=ハサミ、コームの消毒。ご家族が望む訪問理美容サービス=寝たきりなので、さっぱりとカットしていただきたい。
〔ご家族が希望する  訪問理美容時間帯〕 オムツ交換、食事の時間帯を外した日中で2~3ヵ月周期で。
〔作業容態〕 40分以上座れない。ベッド上で。生命維持装置を着装している。
〔ADL〕 起き上がり不可。オムツ。ストレッチャー入浴。
〔健康状態〕 水虫、巻き爪、褥そう=有、拘縮=有、麻痺=有、睡眠=良、睡眠剤=不使用。
〔精神状態〕 現状認識=不可、記憶状態=有、物忘れ=有、痴呆=有

以上の問診票に基づいて、訪問美容カルテを以下のように作成しました。

訪問美容カルテ
〔本人情報〕 Oさん、75歳、女性、要介護5。
〔実施場所〕 岐阜県・Nグループホーム
〔作業上の注意点〕 話はほとんど理解できないが、聞こえるので作業中はできるだけ声かけをする。出来るだけスピーディーに作業する。左麻痺があるので作業上注意する。
〔作業手順〕 ベッド上でのシャンプーは、施設指導員によるハッピーシャンプー。ベッド上でのカットはすいコ~ム使用。フロント=バッグに梳かして浮かないぐらい。サイド=耳は出す。トップ=やや枕ずれあり。ネープ=浮き癖あり。(*ベッド上での生活なので、サイド、ネープはできるだけ短めにカットすること)
理美容福祉の必需品
  • すいコ〜ム
  • ハッピーシャンプー