第16回 登録理美容師の集い
みなさん、こんにちは。山野正義総長が亡くなられて三回忌とのことですが、生前、私も何度がお目にかかっています。改めてご冥福をお祈りします。
今日は、『息子の「Change」』を中心に関連することについてお話します。私の肩書はいろいろありますが、山野さんと深いご縁があるのは「スペシャル・ビューティ・ジャパン」の仕事です。「認定産後ドゥ―ラ」は、妊娠中と産後の母親と家族をサポートする仕事などです。
私は赤カブで有名な飛騨高山の出身です。清水ミチコさんは先輩です。家族ですが父は床屋、父の母も病院の床屋さんで仕事をしていました。私は1983年に結婚、1984年に長女、1991年に次女、1998年に長男が誕生しました。長女は脳性マヒ(全介助)、長男・裕(ゆたか)はダウン症です。
障がいについて
障がいについては、みなさんはすでにご存知だと思いますが、復習的に聞いてください。
目の見えない人を支援するツールは、点字と白杖です。耳の聞こえない人の支援ツールは、手話、字幕、補聴器です。身体や足が不自由な人の支援ツールは、車いす、松葉杖などです。
では、知的に不自由な人の支援ツールは何でしょうか。私たちが考える知的障害のある人にとって、一番大切なことは、物ではなく「人」なのです。人とどう関わるかということがすごく大事なんです。
なぜダウン症というのか
ダウン症の方について「天使のように可愛いね」と言われることがあります。ダウン症の方は、天使ではありません。「人」なのです。怒ることもあれば、泣くことも、叫ぶこともあります。そしてみんな違う顔をしています。では、なぜダウン症と言うのでしょうか。
ジョン・ラングドン・ダウン医師が発見したので、「ダウン症」と言われています。
「ダウン症」と言う言葉を聞くと、「気持ちがダウンするから」などと誤解されていますが、正確に理解して欲しいと思います。人間の染色体は常染色体22対と、性染色1対あり、2本ずつの対になっています。そのうちの常染色体の21番目が通常は2本なのに、ダウン症は3本あります。こうしたダウン症は600人から800人に一人の割合で発生しているとされています。
ダウン症の人には図のような特徴があります。
初めての美容室から成人式まで
ダウン症の長男・裕(ゆたか)が、はじめて美容室にいったときから成人式までを紹介しながら、ダウン症の子どもに対する課題をお話します。
私が住む団地の1階に美容室があります。裕が7歳・小学校1年の時、一人でこの美容室に行かせてみようと考えました。まず、美容室という場所と美容師さんに慣れること、そして何が行われている場所なのか、ここに来る目的は何かを理解させるために3回くらい見学に行きました。その上で、一人で行きました。最初は不安そうな表情でしたが、わずか17分後には満足そうな「どや」顔な表情になりました。それをみてしっかりとほめてあげました。
つまり、評価すること、やってよかったと感じることが大事だと思いました。
美容室だけでなく、こうした小さいことを積み重ねて覚えていくという過程が大切なのです。またこうしたことを親がやるのではなく、美容師さんがやってくれる方が良い場合があります。そういうナナメの関係をつくることです。
2019年、裕は成人式を迎えました。その前に着付けの練習を計画した時、山野愛子ジェーン理事長が協力してくださって、山野学苑のスタジオでダウン症等の子どもさん10数組が着付け・ヘアーメイクをして写真撮影を行いました。親御さんからは、「単独では不安でしたが、集団で、何をしているかを理解しながら安心して記念写真を撮影できて良かった」という声があがりました。
ある一組の親子がいました。母親は息子の晴れ姿をみて、生まれてから今日までこんな日がくるとは想像もできなかったと感激の涙を流していました。
そして、裕の成人式を記念にやりたかったことがありました。それは近所のお世話になっているみなさんにご挨拶に行くことでした。美容室の院長さん、いつも牛乳を買いにいく店のおばちゃん、花やさん、喫茶店のおばさん達です。
こうした地域で暮らす人々と触れ合わせることを小さい時か心がけてきました。同時に必ず「ありがとう、こんにちは、さよなら」の挨拶を欠かさないようにさせてきました。言えなかったときは、お辞儀をするなどです。その結果、街で出会うと必ず声をかけてくれるようになったのです。
イメージを変えること
ダウン症のお子さんを授かったばかりのママに「ダウン症のある方のイメージカラーはどんな色?」と聞いてみました「グレー」と答えが返ってきました。
どうしてかを聞いてみると、近所の福祉就労で通っている大人の方がいつもグレーの上下のジャージ姿でつまらなさそうに歩いていた。そのイメージから我が子の将来をネガティブに捉えたということでした。この話を聞いて、「イメージを変える」ことが決定的に必要だと考えました。
これはディック・ブルーナさんのデザインです。車イスにのっている「ロッテ」、人とちがった兎のたれ耳の「ダーン」、耳が不自由な「ベン」などです。それぞれは多様性を尊重するお話です。そして 「便利、楽しい、おしゃれに、キュートに」のさまざまなグッズを制作しています。そして相手の気持ちになってみようという「こころのボーダーをなくそう」がコンセプトになっています
スペシャル・ビューティ・ジャパン
最後に、私がコミュニケーション担当をしています「スぺシャル・ビューティ・ジャパン」の活動を紹介します。今年5月に開催した第7回は、山野学苑の協力をいただいて、山野ホールで開催しました。今後も継続しますので、ぜひご覧になってください。このイベントは、小学校2年以降の知的発達障がいがある30人程度の男女が出場するビューティ・コンテストです。
山野美容専門学校の学生さんは出場者とペアになり、親御さんは付き添いません。2日間行動を共にし、1日目はワークショップ、2日目のコンテストでは、出場者のヘアメイクを担当、フォーマルな衣装も着ます。これを通じて学生との絆が生れます。開催の前に知的障害の方の疑似体験を行い、講義と実践を重ねていくことは素晴らしいことです。
「スペシャル・ビューティ・ジャパン」の活動は、ただ美しくなることだけではなくて、心も豊かに、美しくなること、これをきっかけに何かを得てもらうことを心がけています。
最後に、福祉美容を行う上で大切なことは「地域」だと思います。自分が住むところの近くに理解してくれる人がどれだけ沢山存在するかだと思います。本日参加してくださったみなさんも是非「地域」でサポートして下さる方になって頂きたいと思います。ありがとうございました。