第1回 登録理美容師の集い
奥山一成=NPO全国介護理美容福祉協会理事
「理美容」人間の尊厳を守るための大切な仕事です。従って高齢者や障がいを持つ方々への理美容は本来なら予防医学、健康保険、介護保険等に制度的に組み込まれるべきです。ところが現実には自覚的な理美容師や組織によるボランティア活動に頼っているケースが多いのです。また、必要な経費を支払ってもサービスを求める在宅の高齢者等に対応出来る体制も不十分です。
こうした現実の中で、訪問理美容を医療と同じように制度化させる展望を持って、同時に今現に必要経費を支払っても質の高いサービスを求めている高齢者や障がいを持っている方々に応えるビジネスとして確立する必要があります。
理美容サロンを経営しながら訪問理美容を実施するケース
「訪問理美容ができるサロン」をセールスポイントにすることです。在宅の高齢者に訪問理美容を実施するためには、ご家族との信頼関係がなければ出来ません。そうした信頼関係を築くことによって、そのご家族と関係者がサロンの固定客になる道が開けます。経営的には、訪問理美容収入は全体の15〜20%と想定することが必要です。
理美容サロンを持たずに訪問理美容を実施するケース
病院や老人保健施設と契約して定期的に施設での訪問理美容を実施することを中心にして、その合間に在宅の高齢者等への訪問理美容を実施できる態勢にすることです。訪問理美容対象の施設としては、①病院 ②老人保健施設 ③特別養護老人ホーム ④身体障がい者福祉施設 ⑤知的障がい者福祉施設 ⑥グループホーム ⑦老人在宅などがあります。以上の売り、ビジネスとして訪問理美容が可能な施設は、病院と老人保健施設です。特別養護老人ホームなどに対しては、地域の理美容師組合などがボランティア的な低料金で訪問理美容を実施していますが、病院と老人保健施設は医療法人が経営し、衛生面での規制が厳しく衛生管理者から許可がおりません。その点、登録理美容師は衛生面での教育もしっかりしているので参入が可能です。
北村秀敏=NPO全国介護理美容福祉協会事務局次長
美容師法・施工令・都道府県条例(ここでは美容師法に基づいて解説します)
訪問美容については、美容師法→美容師法施行令→都道府県条例という段階を踏んで規則が定められています。
まず美容師法は「第7条(美容所以外の場所における営業の禁止)美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない。ただし、政令で定める特別な事情がある場合には、この限りではない」となっています。
次に美容師法施行令は、ただし書きを次のように定めています。「第4条=美容師が法第7条ただし書きの規定により美容所以外の場所で業務を行う事ができる場合は、次のとおりとする。①疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して美容を行う場合 ②婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に美容を行う場合 ③第2号の他、都道府県が条例で定める場合」。
次に都道府県の条例が、疾病その他と婚礼その他以外の場合について定めています。
事務局には全都道府県及び政令指定都市の条例があります。
理容および美容行為の範囲
理容とは「頭髪の刈り込み、顔そり等の方法により、容姿を整えること」(理容師法第1条の2)、美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」(美容師法第2条)と定め足れています。
理容師法・美容師法では、以上のようになっていますが、理容・美容技術の変化や利用者の要求が多彩化しているなどの社会的な変化によって、理容・美容の定義に疑義が生まれてきています。そこで厚生省は昭和53年に運用にあたっての通知を出しています。
その主旨を要約すると、「理容師は、男性に対して頭髪刈込み等の理容行為の一環として仕上げを目的とするコールドパーマネントウェーブは可。それ以外のコールドパーマネントウェーブは不可」、「美容師は男女ともコールドパーマネントウェーブ等の美容行為の一環としてカッティングすることは可。女性に対するカットはコールドパーマネントウェーブと関係なく可。これ以外のカッティングは不可、「染毛は、理容師・美容師とも可」ということになっています。